装置構造
日本実験棟きぼう船外実験プラットホームに搭載を計画しているCALETは、高エネルギー宇宙線観測のためのカロリメータ部(CAL)と7keV-20MeVのγ線観測が可能なγ線バーストモニター部(CGBM)から構成される。
CALETの概念図を図7に示す。カロリメータ部は、気球実験で成果を挙げた宇宙線シャワー解像型検出器(BETS)と同じ原理の、シンチファイバーとタングステンからなるシャワー可視化型カロリメータ(IMC)と、無機シンチレータ(PWO, PbWO4)を用いた全吸収型カロリメータ(TASC)及びプラスチックシンチレータを用いた電荷測定器(CHD)から構成されている。
図7 CALETの概念図と各部名称
検出装置 | |
カロリメータ部(CAL) | ガンマ線バーストモニタ(CGBM) |
・Charge Detector (CHD) ・Imaging Calorimeter (IMC) ・Total Absorption Calorimeter (TASC) |
・Hard X-ray Monitor (HXM) ・Soft γ-ray Monitor (SGM) |
データ収集・送信/ミッションサポート機器 | |
データ処理・電源 | サポートセンサ |
・Mission Data Controller (MDC) 制御、データ送受信、トリガ、電源 ・HV-BOX 高電圧電源(PMT:68ch, APD:22ch) |
・Advanced Stellar Compass (ASC) 観測装置の方向測定 ・GPS Receiver (GPSR) イベントへの時刻付け(<1ms) |
CALETの前身であるBETSによる気球実験では、エネルギー領域が1TeV以下に限られおり、IMCのみによる電子、γ線選別とエネルギー測定で十分であったが、1TeV以上の領域で電子の観測を正確に行うためには、バックグランドとなる陽子の相互作用による擬似イベントの除去を10万倍以上の精度で行う必要がある。これは、TASCの付加により陽子除去性能をさらに向上させ、エネルギー分解能を高めることによって達成できる。気球実験の経験、加速器(CERN−SPS)によるビームテストとシミュレーション計算によって最適化されたカロリメータ部の構造と各部の構成要素を図8に示す。
CALETはポート占有利用ミッションとして選定され、日本実験棟きぼうの船外実験プラットフォームには、図9に示した場所へ取り付けられている。強力な粒子選別性能と高精度なエネルギー測定性能を実現するため、CALETは大型化し装置重量も増加したが、ペイロードの総重量はおよそ650kgであり、曝露部(船外実験プラットフォーム)大型ペイロード用取り付け点#9への搭載、およびH-II補給機(HTV)での輸送のいずれについても、インタフェース適合性を持つよう開発が行われた。
図9 CALETの取り付けポートと船外実験プラットフォームの概観